ばななぼーと

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ドン底大学院生時代と尾道

 2013年、学科の教授陣のお情けで母校の大学院に入れて貰った僕は、案の定ついていけず、完全にメンタルをぶっ壊していました。

 

 そもそも、文系の大学院というのはメンタルをぶっ壊してる人だらけです。文献を前にして、ああでもないこうでもないと日がな一日やってるだけに、その成果を見てもらう指導教授とうまく関係を築けないと、自分が今何をしているか見失いがちになります。

 

 僕は大学四年生の頃に就職活動をしたり、教育実習へ行ったりするうちに、自分がこのまま社会に出ることに悔いがある気がして、大学院に進学しました。しかし、前述のとおり、たいした実力も、研究に人生を捧げる熱意もないまま、お情けで入れてもらったようなものなので挫けるのは当然のことでしたが、それ以上に多忙な指導教授とうまく関係を築けなかったことが一番の行き詰まりの原因でした。

 

 そんなわけで、M1の終わりの頃になっても修士論文の骨子はグラグラでした。これはもう中退した方がよっぽどマシだなと思い、そのために再び就職活動をしてみたりもしてみましたが、それすらもうまくいかず、宙ぶらりんで親に迷惑だけをかける存在として社会にいることがとても苦しかったです。

 

 更に、そこまで見てもらっていた教授が研究休暇に入るため、他の教授に指導を引き継いでもらわなければならないという問題も抱えていました。M2が始まる2014年、どうしようも無くなっていた僕は、研究休暇に入る教授と入れ替わりで戻ってきた教授に全てをさらけ出し、「正直、もう、何をしたらいいかわからなくなってます。」と泣きつきました。

 

 我ながらどうしようもない学生だったなと思いますが、しかし、その先生は僕のことを見捨てず、真摯に向き合ってくださりました。研究の方法と計画を見直し、これから読むべき文献、それに対するアプローチと整理の方法、そして何より、文献だけでは見えてこない部分を補うフィールドワークを提案してくれました。

 

 それからというもの、相変わらず綱渡りではあるものの、前には進んでるのが実感できるようになり、少しずつ修士論文が形になりそうな未来が見えてきました。奇跡的に修了後に研究とは直接の関係は無いものの、それなりに自分の関心に近い仕事につけることも決まり、研究に打ち込めるようなったので、その仕上げとして夏休みに前述したフィールドワークに出かけました。

 

 行き先は関西・中国地方で3泊4日の行程。夜行バスに揺られ、青春18切符を駆使し、一泊2000円代のゲストハウスに泊まる貧乏旅行でしたが、思っていた以上に成果があり、これが決め手となって修了の目処が立ちました。

 

 京都に泊まった時の宿は「古民家」を自称するほぼ廃屋でしたが、その日泊まるのはイギリス人カップル2組と中国人女性、僕、そして会社員の男性でした。日本人の方が圧倒的に少なかったので、なんとなく、その会社員に話しかけてみると、なんと日本を代表する大企業の研究者で、京大で行われる原発に関する会議に出席するために来て、なんとなくおもしろそうだったからゲストハウスに泊まってみたとのことでした。外国語もペラペラで、その会社員を通じて前述したイギリス人カップルや中国人女性と談笑したりして楽しかったです。

 

 関西で2泊し、その翌日に青春18切符で向かった先は、まさかの今住んでいる広島県福山市でした。とはいっても、福山駅ではなくさらにその北部の駅で降りての調査でした。一仕事終え、その日は福山の隣の尾道に泊まりました。最終日は予備日にしていたのですが、滞りなく進んだので、少しは気晴らしで観光して帰ろうと思っての尾道でした。

 

 尾道駅を降りたその瞬間、僕はその景色に心を奪われました。東北の山育ちということもあり、港町というものが新鮮だったこともありますが、迷子になるのが楽しくなるような不思議な小道があったり、船が島々を行き交う光景が素敵でした。

 

 宿は相変わらず2000円代の激安宿でした。しかも、個人経営のようでたまたま訪ねた時間に不在にしていたので、大したものも入ってないので、スーツケースだけでもと思い、書きおきと共に預けて外に出ました。駅前でレンタサイクルを借り、炎天下の中、特に行先も決めずあちこちを巡りました。

 

 観光ガイドも一切読んでいなかったので、港をぼんやり眺めたり、坂道を登ったりしていましたが、それはそれで楽しかったです。

 

 印象的だったのは、それまでの人生で見たことがない虫が飛んでいたことでした。今となっては姿形は思い出せないのですが、その虫を眺めながらふと、「あぁ、いろいろしんどかったけど、なんとか立ち直れたかもしれないな」と思ったことは今でも憶えています。

 

 その後、修士論文は無事に提出することができ、仕事も始めて今日に至るわけですが、あの時に不思議な縁があった京都と福山にまさかその後の人生で住むことになるとは思いませんでした。

 

 尾道は自分にとって特別な場所だったのですが、今年は福山に引っ越したこともあり、気がつくと7回も行っていました。あの夏とは違い、心に余裕があるだけに見え方も変わりましたが、相変わらず素敵な場所です。

 

 ふと、あの頃の夢を見て早起きしたので書いてみましたがなんだかえらい長文になりました。

 

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【おまけ】

僕が昔から好きな堀江由衣さんの今年出たアルバム『文学少女の歌集』も夏の尾道をモチーフにしていてとても良かったです。各種サブスクで聴けるので是非おすすめです。

2019年マイベスト。

https://youtu.be/K1Ty9O2Cdsw

 

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